航空会社は旅行会社に全ての責任を押し付けるな
久しぶりにカープ以外の話題で書いてみます。長文になりますがご容赦を。
海外ツアー料金、燃料サーチャージ含む「総額表示」に (讀賣新聞)
金曜日の讀賣新聞に出ていた記事です。
業界人としてこの問題だけは無視するわけには行きません。一言言わせてもらいます。
記事を読むとこの特別燃油付加運賃の問題、旅行会社と消費者間の問題だと誤解されかねませんが、はっきり言わせてもらえばこれは航空会社と消費者間の問題なのです。
旅行会社はあくまで航空会社の代行として消費者からこのサーチャージを徴収しているだけなのです。
この問題に関する詳しい記事はこちらにあります。
「付加運賃」に苦情殺到 航空VS.旅行 (フジサンケイビジネスアイ)
■旅行業界、総額表示を要請/航空業界、原油急騰で拒否旅行パンフレットの料金表示をめぐり、旅行業界と航空業界が対立している。ほとんどのパンフには、原油高騰で引き上げが続く「燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)」の金額が記載されておらず、「分かりづらい」などの苦情が殺到。旅行業界は付加運賃を含む「総額表示」を来年4月にも導入したい考えだ。そのためには3カ月ごとの付加運賃改定をパンフに合わせて6カ月ごとに変更してもらう必要があるが、航空業界は「急激な原油高に対応できない」と反発し、事態打開のめどはたっていない。
ツアー旅行などのパンフレットには航空運賃やホテル宿泊料などを合わせた「旅行代金」だけが記載されている。
例えば、ある大手の「ハワイ・ホノルル5日間滞在ツアー(7~9月出発)」の場合、料金は「6万9000~11万6000円から」と表示。付加運賃については「別途加算されます」とだけ説明されている。気づかずに、窓口で申し込むと、往復で4万円もの追加を請求される。
燃料価格の上昇を自動的に料金に反映させる付加運賃は、原油高騰で上昇の一途。旅行代金の半分前後の金額が加算されるだけに、窓口でトラブルになるケースが多発しているほか、付加運賃を聞いて、申し込みをやめる人も多いという。■「二重価格」
昨年12月に日本旅行業協会(JATA)が加盟各社を対象に行ったアンケートでは、「二重価格の印象がある」「納得できない」「不透明」などの苦情が多数寄せられていることが分かった。また、複数の会社で、社員が詐欺呼ばわりされ、退職を申し出たケースも報告されている。
付加運賃を表示できないのは、旅行商品は半期ごとに設定しパンフを作成することが通例になっており、四半期ごとに改定される付加運賃を反映できないことが原因だ。
このため、JATAは来年4月からの総額表示導入を目指す方針を決定。5月7日に国内外の航空約60社に対して、(1)付加運賃の改定時期を旅行商品にあわせ6カ月ごとにする(2)付加運賃を本体運賃に組み込む(3)付加運賃分についても代行徴収手数料を旅行会社に支払う-ことなどを要望した。これに対し、航空業界は「6カ月ごとの悠長な改定では、急激な燃料費上昇に対応できない」と猛反発している。
航空各社は投機マネーの流入などで原油価格が短期間で急騰する事態に対応するため、昨年7月にそれまで不定期だった付加運賃の改定を3カ月ごとに変更したばかり。6カ月ごとに延長すると、その間の急騰で付加運賃が一気に大きく上昇することになりかねない。激しい乱高下で一時的に下がった場合、改定期間が長いと、利用者がそのメリットを享受できない可能性もある。国際航空運賃の認可を行う立場にある国土交通省は「当面は民間の話し合い」として静観する構えだが、原油価格がさらに上昇気配を強めるなか、両業界の歩み寄りは難しそうだ。(山口暢彦、前田明彦)
【用語解説】燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)
航空燃油価格の高騰に伴い2005年1月から国際線に導入された制度。昨年7月に不定期から3カ月ごとの改定に変更された。日本航空と全日本空輸の7~9月の付加運賃は、2~4月の燃料価格の平均に基づき、欧米路線で現行の片道2万円から2万8000円に、ハワイやタイは1万4000円から2万円に引き上げられる。引き上げは日航が昨年7月から5四半期連続、全日空は4回目となる。
--------------------以上引用---------------------------------
私自身は以前書いた記事でこの「特別燃油付加運賃制度」が航空会社に「打ち出の小槌」を与えてしまったのではないかと批判しております。
この問題で航空会社が一番ずるいと思うのは、この「特別燃油付加運賃制度」について消費者への説明、クレーム処理その他一切のことを旅行会社に丸投げしているにもかかわらず、多くの航空会社は旅行会社に対してその対価となる手数料等を一切支払っていないということです。
それだけでも腹立たしいのに今回のツアー代金を燃油サーチャージを含む総額表示にするという話は燃料費の変動リスクを消費者ではなく旅行会社に負わせようとするものです。
例えば30万円の米国行きのパッケージツアーがあったとします。このときの旅行会社の利益は一割の3万円となります。
今回7月の特別燃油付加運賃の値上げ幅は日本航空、全日空で片道8千円、往復で1万6千円となります。
ツアー代金を燃油サーチャージを含む総額表示とした場合、旅行会社の利益の半分以上が航空会社への燃油サーチャージとして消えてしまうことになります。これでは旅行会社は経営が成り立たなくなります。
消費者の旅行代金と特別燃油付加運賃に対する不信感というのはよく理解できます。
しかしながら航空会社が現行の制度を維持し続ける限り、旅行会社としては「総額表示」などということはとても承服できるものではありません。
燃油サーチャージを航空券に切り込む以上、これについての説明責任、クレーム処理の責任は航空会社にあります。燃油サーチャージを航空券に切り込むということは旅行会社側が依頼したわけではありません。燃油サーチャージを旅行会社が代行徴収したとしても、現行制度では旅行会社側には何のメリットもありません。ただお金が右から左へ流れるだけです。
ならいっそのこと、旅行会社は燃油サーチャージの代行徴収を航空会社に対して拒否するくらいの対抗措置を取って見たらいいのではないでしょうか。
そうなれば、航空会社は以前の空港施設使用料のようにチェックインの際に顧客から現金で徴収しなくてはならなくなります。その際の人的負担、時間的手間、顧客への説明責任、クレームの処理等に直面しない限り航空会社側の考え方、体質は変わらないのではないでしょうか。
過激な意見かもしれませんが、旅行会社の経営の根幹にかかわる問題である以上、真剣に考えるべきだと思います。
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